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プロローグ 秋。 季語で言うならば7、8、9月に属するその季節も、時代の進行というか価値観の違いというかで、俺の中では9、10、11月が秋だと認識されている。しかしどういうわけか、今年は秋があったのかどうかを疑うような気温で、これもまたお偉い団長様が何かしでかす予兆ではないかと疑ったが、奴の精神専門である古泉曰く 「彼女の精神状態はとても良いままですよ。閉鎖空間も今のところ、大規模で発生しておりませんし」 らしい。しかし、ハルヒは温厚平和な日常が嫌いなはた迷惑な奴だ。いつ何をしでかすか分からん。秋といえば読書、芸術、食欲。映画が芸術に入るのなら、まだ2つも不安要素が残っている。これは何か来るぞ、と俺はノストラダムスの予言が今更になって頭上に降り注いでくるかもしれないと言った心持ちで待機していた。 つまり俺は、涼宮ハルヒという人物に出会ってから、確実に用心深い人間へと成長していたのだ。 ど素人が作った映画が公開し終わってから早3日。クラスの全員がそろそろ文化祭の余韻が無くなってきた頃辺り、俺はハルヒが授業中良からぬことを作戦立てているのを気配で察知した。これは数々の不思議体験、いや面倒くさい事柄を身を持って味わってきた俺だから分かるものだ。古泉や朝比奈さんより早く感づける自信がある。無論、長門には勝てないが。 「‥‥‥で、今度は何を企んでいるんだ」 「ふっふーん」 教えてくれないのかよ。 「今日のミーティングで発表するつもりよ。キョン、絶対に来るのよ。1秒でも遅れたら罰金だからね!」 ‥‥と、こちらの顔を一度も見ずにせっせと、まるで鶴の恩返しの鶴のようにこいつは何かを作っている。細長い紙の先端の穴の空いた場所からはリボンが、白紙の部分にはSOS団のサインが‥‥。 俺の勘も捨てたもんじゃないな。しかしこの勘がテストの時だけ怠けるのはいただけない。テストで良い点を取っているハルヒが妬ましい。 「じゃっじゃーん!お待たせ!!」 ドアを豪快に開けるハルヒに、誰も待ってねえよ、と思わずハルヒの後ろから声を出しそうになったが、律義にも独りでオセロを研究している超能力者、メイド姿の未来人、本に目を向けている宇宙人らは待っていた。古泉、その薄気味悪い笑みをこっちに向けるな。 「今日のミーティングは、こんな秋ならではの! ‥‥」 キュキュッキュー、とホワイトボードに文字をでかでかと書くハルヒをよそに、俺は古泉の前に座ってから荷物を床に下ろした。一生懸命戦略を練っていたようだが、生憎俺は負けん。お前は序盤で石を取りすぎるんだ。 「何が始まるんでしょうね?」 こいつがこう言う時は、大抵何が起こるか分かっている。だから俺は答える必要無しと最高裁判所の裁判官になったつもりで判断し、無言で目の前にあるオセロを1つずつ取り除いてやることにした。古泉も一緒になって、オセロを手元に戻していく。 「お茶をどうぞ、キョン君」 そう言ってお茶を差し出してくれるSOS団唯一の目の抱擁役である朝比奈さん。夏に別荘でメイドを目にして以来、どうやらメイドというものにいっそう影響を受けたらしい。本当に可憐で愛らしい。先輩とは思えないですよ朝比奈さん。 市販で買ってきたお茶よりも美味い緑茶をすすりながら窓際を見ると、黙々と本を読んでいる宇宙人がそこにはいた。その表情のまま蝋で固められてしまったかのように無表情のままページを捲っていくその様は、大地震が起きてこの学校が瓦礫の山と化しても、微動だにしない文学少女といったような雰囲気を釀しだしていた。といっても、長門ならこの学校が崩れる前に何とかしてくれるだろう。 「いい!? 我がSOS団は読書の秋を記念して―――‥」 すぅーっと、ビックボイスを叩き出そうとするハルヒ。またろくでもない考えを思いついちまったようだ。 「‥――SOS団主催、読書大会を始めようと思います!!」 ……相変わらず文字感覚のバランスが悪い奴だ。会って文字だけ下にいってやがる。 まあそれはともかく。馬鹿みたいにでかい声でそう宣言した後、やはり授業中作ってたのは栞だったのかと俺はひどく痛感した。よりによって読書がくるとは‥‥まあ本を書けと言われるよりはましか。 しかし、その全く持って伝統も歴史もない、部活としてもまともにOKサインをもらっていないこのSOS団が主催する大会が、後々とんでもないことを引き起こすとは誰も知りなどしなかった。 ‥‥もちろん、3学期に文章を書かさられるハメになることも俺は知らなかったことは周知の事実である。 →涼宮ハルヒの分身 Ⅰへ
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第七章 俺たちは30分ほどで学校に着いた。 そしてやっぱり神人が暴れていて校舎もめちゃくちゃだったし、校庭には神人に投げ飛ばされたと見られる校舎の残骸が投げ捨てられていてこの世の風景とは思えないようだった。 ハルヒはもうどうしていいのかわからないようにこう言った。 「ねえ、キョン。いったい学校に来てどうするつもりなの?」 「わからん。とりあえず校庭のど真ん中に行こうと思う。」 ど真ん中とはお察しの通り俺とハルヒが昔キスをした場所だ。 そこに着けば恐らく何らかのアクションが起きるはずなのだ、そうでなければあの未来人や朝比奈さんが止めるはずである。 俺はハルヒを半分無理やりど真ん中に連れて行った。 そのとき、ポケットに入っていた金属棒が金色に柱のように光りだし、ハルヒと俺を光の中に入れた。何がどうなってるんだ。 俺は慌ててポケットから金属棒を取り出した。 これでハルヒが普通の人間に戻ったのか? もちろんそんなわけは無く、その金属棒にひびが入った。 ピキピキ…割れていく。 中から茶色い棒が出てきた。 俺の嫌な予感は的中し、金属棒の中からポッ○ーが… やはりそうか。 ポッ○ーゲームか、それでキスしろってのか。 ハルヒは察したのか俺からポッ○ーを奪い取り口に加えて目を閉じた。 俺も目をつむりポッ○ーをくわえたそのとき、前のときのような光が世界を包み俺たちを元の世界に返した。 たまたまグラウンドはどの部活も使用してはいなかった。 あれ?朝比奈さんやら古泉やら長門やらはどこに行ったんだ? 閉鎖空間に閉じ込められたのか?だとしたら神人が全部消滅するまで空間は消滅しないはずである。 だとしたら朝比奈さんたちはどうなる。 いやハルヒの能力が消えたのだから閉鎖空間も消滅したのか?古泉は何も言ってはいなかった。 その時、後ろで俺を呼ぶ声がした。 「キョン君!」 朝比奈さんである。あの未来人と(小)方もいる、気絶したまま(大)にかつがれてるが…。 「朝比奈さんたち、どうしてここに?」 「古泉君に言われたんです。学校に向かってくださいと。これも規定事項ですし。」 「そうですか。」 この時ハルヒがあることに気付いた。 「有希は?」 そうだ長門は?朝倉と交戦中のはずのやつはどこに言ったんだ。 その問いには朝比奈さんが答えた。 「長門さんはあと1分ほどでここに現れるはずです。朝倉さんって人を倒して。」 よかった。 じゃあ古泉はどうなったんだ。 まさかあのとんでも空間に閉じ込められたままなのか? 長門がやってきた、古泉の事を聞いてみる。 「古泉一樹は閉鎖空間に残り、自爆して全て倒すつもり。」 自爆?自爆ってあれか?ボーンってなって死んじまうあれか? 「そう。」 古泉はどうなるんだ。 「死ぬ。」 どうにかならないのか。 「ならない。そうしなければ世界が滅ぶ。古泉一樹は世界を守るために死を選んだ。」 くそっ、俺の許可なしで死にやがって。 ハルヒは悲しい顔で「私のせいよ、私が転校生が来て欲しいなんて思ったから。だから古泉君は…」 落ち着けハルヒ。お前は何も悪くないし古泉のことは悲しいが今はこの状況を何とかすることが先決だ。俺たちを助けてくれた古泉のためにもな。 長門。朝倉はどうなった。 長門はいつぞやのカマドウマのとき同様、校門を指を刺した。 「すぐそこ。すぐ倒す。もう余裕は無いはず。」 その直後、校門から高速で何かが走ってきた。勿論。朝倉である。 朝倉は長門めがけて突っ込んできた。 不謹慎かもしれんがターゲットが長門でよかった。 ターゲットが俺なら一瞬でことは終わっていたからな。 長門は校庭のど真ん中で戦闘をおっぱじめた。 轟音が鳴り響く。 轟音で朝比奈さんが目を覚ました。 「ふえ?ここどこですか?あれ?この人私にそっくり。誰なんですか?そっちの男の人も。古泉君はどこいったんですか?」 なんというか、どっから説明していいのか。 とりあえずここで目を覚ますのは朝比奈さん(大)にとって来てい事項なんだろうか。朝比奈さん(大)に目配せしてみる。 朝比奈さん(大)が頷いた。 俺はいまいち状況を理解できていない朝比奈さんに説明した。 「この人は今の朝比奈さんよりも未来から来た朝比奈さんです。恐らく今まで朝比奈さんに命令を出してたのもこの人です。」 「え?そんな、まさか。」やっぱりと言うかなんと言うか、やはり混乱した。一応孤島のときのこともあるので古泉のことは伏せておいた。 朝比奈さん(大)が口を開く「そうです、私は未来のあなたです、いろいろな指令をいつも出していたのも私です。それからキョン君、この騒動が終わったらこの子にこの子がするべきことを全て教えてあげてください。」 「え?わかりました。」どういう意味だろう。七夕のときや一週間後の朝比奈さんが来たときの手紙のことを教えてあげればいいのだろうか。 長門が交戦中にも関わらずこっちを向いて叫んだ。「ダメッ!!」 すると「確かに頼みましたよ。」といって朝比奈さんの後ろで盾になるように大の字になった。 その瞬間である。鉄砲か何か、もしかしたら光線銃のようなものかも知れない。 一線。 俺の盾となってくれた朝比奈さんは倒れた。飛んできたであろう方向からは何も見えない。 血まみれになって倒れた朝比奈さん(大)を支えてあげる。「これも規定事項ですから…」 そう言って朝比奈さんは目を閉じた。 俺はハルヒに叫んだ。「朝比奈さんに見せるな!!!」 ハルヒは急いで朝比奈さんに抱きつき視界をふさぐ。 だが何もかも遅い。朝比奈さんは泣きじゃくり倒れこんでしまった。 ここで突っ立って傍観していた未来の俺が地団駄を踏み口を開いた。 「まさか!クソっ!それで未来を守ったのか。クソっ!」 そうか。朝比奈さんが朝比奈さん(大)を認識することで現在と未来がつながったのか。 それなら俺と未来人の時でも同じことが言えるのだが恐らくハルヒが生み出した不安定な未来なので朝比奈さんが朝比奈さん(大)を認識することで上書きされたのか。 恐らくこの未来人の規定ではここで朝比奈さんが死に、朝比奈さん(大)の存在に矛盾を出すためだったのであろう。 と言うことは未来人戦はこちらの勝利である。大きな犠牲を払ったが。 とち狂ったように未来人が言った。「もうお前ら全員殺してやる。」 おいおい未来の俺よ。なに言ってやがんだ。 その時、突然空が無数の点により暗くなった。 なんだありゃ。いろいろありすぎてわけがわからん。 第八章
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5.選択 翌朝、俺は重い足取りで学校に向かっていた。 意味もなく早朝登校を続けているので、まだ他の生徒は見あたらない。 学校を休んでハルヒについてやりたいとも思った。 しかし、ハルヒの目覚めに立ち会う勇気がなかった。 目が覚めたとき、ハルヒは俺をわかってくれるのか? それを考えると、とてもハルヒのそばには居られない。 前日、古泉と「諦めるわけにはいかない」と話し、家でもずっと考えた。 しかし、いい案が浮かぶ訳もなく、良く眠れないまま朝が来てしまった。 諦めたくはないさ。 でも、もうできることなんかないんじゃないか。 絶望にも似た気持ちで、学校へのハイキングコースを上っていった。 「今なら話を聞いてくれるかしら?」 「消えろ」 橘京子が再び現れた。俺は目を合わす気すらない。 うるせぇ。お前と話すことなんかこれっぽっちもねぇ。 「涼宮さんを助けたいんじゃないんですか?」 「消えろと言っている」 「もうっ 話くらい聞いてくれてもいいじゃないですか!」 橘は俺の後を追ってくる。うっとうしい。 「わたしは涼宮さんを助ける方法を知っているんです!」 そのセリフに俺はぶち切れた。 「ふざけんじゃねぇ!! そもそもハルヒが倒れたのはお前らの仕込みだろうが!!!」 気がつくと橘の襟首を掴んで怒鳴りつけていた。 しかし、橘は笑みをたたえたまま、余裕の表情で続けた。 「それは誤解です。私たちは涼宮さんに何もしていません」 「それを俺に信じろと言っても無駄だ」 どう考えたってこいつらの仕業だ。 「仮にそうだったとしても、今となっては涼宮さんを助ける方法は1つだけです」 「……言ってみろ」 こいつの言うことを聞くのは癪だった。 ハルヒを、俺たちをここまで苦しめやがったこんな奴らの手は借りたくない。 だが、今はハルヒを助けることが先決だ。どんな借りを作ったとしてもな。 「簡単なことです。涼宮さんの力を使えば助かりますから」 相変わらずの笑顔でしれっと言う橘を殴ろうとする、俺の右手を必死で押しとどめた。 ハルヒの力だと? そりゃ、長門をして情報統合思念体を消させるハルヒの力だ、 ウイルスレベルの宇宙的存在を消すのは簡単だろう。 だが、ハルヒ自身がそれを知らない。 もしかしたら無意識に自分の緊急事態を察して使うかもしれないが、あてにはできない。 かといって、自覚させるわけにも行かない。 そもそも、誰の声も届いていない今のハルヒに自覚させることすらできないだろう。 「だが、ハルヒは意識的に力を使える訳じゃない」 そんなことはこいつだってわかっているだろうが。何なんだよ一体。 「ええ、ですから意識的に力を使える人に使ってもらえばいいんです」 ……機関のような組織の人間は回りくどい表現が好きなのか? 「はっきり言え」 「判ってるんでしょ? 涼宮さんの力を佐々木さんに渡せば、佐々木さんが助けてくれます」 「ふざけるな」 やはりそれが目的か。畜生、ぶん殴ってやりてぇ。 目で殺せるなら殺してやるくらいの憎しみを込めて、橘を睨み付けた。 橘は俺の視線を平然と受け止めて言った。 「でも、今となっては他に方法がないですよ。時間もありません」 悔しいが橘の言うとおりだ。 さっき思った通り、ハルヒを助けることが先決だ。 ハルヒさえ助かれば……。 「佐々木はこの話を了承しているのか」 聞くと橘は目を伏せて言った。 「いえ、今回の話を佐々木さんは知りません。でも、言えば了承してくれるはずです。 佐々木さんはそういう人。あなたも知ってるでしょ?」 そうだ、佐々木は人が苦しんでいるのを放っておく奴ではない。 だが、以前佐々木はこんな力を持つことは望まないと言っていた。 それを押しつけてまで佐々木に頼るわけにもいかない。 そんな俺の心を見透かしたように橘は続ける。 「佐々木さんが力を持つことを望まないなら、佐々木さんは涼宮さんに力を返すでしょう。 すべてが終わった後にね」 相変わらずの笑顔で俺を見続けている橘。 俺は悩んだ。それしかないのか? はっきり言って、1から10までこいつに踊らされている気がして癪にさわる。 だが、俺はハルヒを助けたい。 佐々木が力を受け取った後にハルヒに返すかどうかはわからんが、それでもいいんじゃないか? ハルヒの力がない方が、世界も安定するんじゃないのか? ふいにそんな考えまで浮かんできた。 いや、俺はどうかしてるぞ。それでいいはずがないじゃないか。 しかし、どうすればいい? 今日にもハルヒは目覚める。目覚めたとき、ハルヒは何者かに変わっているかもしれない。 俺はどうする? ハルヒに会いたい。 教えてくれ、ハルヒ。 俺はどうすればいい? 心を決められないまま、俺は口を開いた。 「……お前の言うことはわかった。俺は……「ダメですよっ!!!!」 いつもなら力の抜けるような高い声に、今日は鋭く遮られた。 「朝比奈さん!?」 我がエンジェル朝比奈さんが、目にいっぱい涙をためて俺を睨み付けていた。 「ダメです、ダメだったらダメです!!!」 マンガのように俺をぽかぽか殴りつけてくる。 俺は状況を理解できなくて戸惑っていた。 「えーと、朝比奈さん、何でこんな早くにここに居るんですか?」 「それは今日この時間に……いえ、何でもないですっ! 禁則事項ですぅ!」 なるほど、朝比奈さん(大)あたりから指令が来たのだろう。 そこまで言えばわかってしまうんですけどね、朝比奈さん。 俺は苦笑しながらも言った。 「俺はまだ何も言ってないんですが、何がダメなんですか」 俺が言うと橘が口を出した。 「朝比奈みくるさんは、涼宮さんを助け出す良い案を持っているんですか?」 相変わらず余裕の笑みだ。むかつくぜ。誘拐犯のくせに。 「そんなのありません! でもダメです!」 朝比奈さんは必死に言う。いや、だから俺はこれからどうするつもりなのか言ってないんですが。 「キョンくんは橘さんたちに協力するんですか! そんなのダメですっ!」 ダメの一点張りだ。 「いや、俺はまだ協力するとは言っていませんよ」 何とかなだめないとな。第一、俺はまだ協力する気にはなっていない。 実を言うと、佐々木に会ってみようと思っただけだ。 そう言うと、朝比奈さんは激しく首を横に振った。 「だからそれもダメです! キョンくんは涼宮さんのそばに居ないとダメなんですっ!」 俺は呆気にとられた。ここまで強硬に言い張る朝比奈さんは初めて見た。 一体どうしてここまで言い張るんだ? 「あら、それで涼宮ハルヒが乗っ取られるのを黙って見てろって言うんですか?」 橘がむかつく笑顔で言った。だが、橘の言うとおりだ。黙って見てるだけ何てできない。 「まだ、できることがあるはず。キョンくんならできますっ」 そう言うと、それまでこらえていたのだろう涙がボロボロとあふれてきた。 それは買いかぶりです、朝比奈さん。 しかし、何で今日はここまで強情なのだろう? もしかして…… 「それは既定事項だからですか?」 朝比奈さんがここまでこだわるなんて、それ以外に考えられない。 だが、それは瞬時に否定された。 「違いますっ! ひっく……も、もし、そうだとしても、わたしには、し、知らされて、ません」 そうだった。朝比奈さんの持ってる情報なんて、俺と大して変わらない。 だが、それなら何故。 「ご、ごめんなさい、わたしのわがままです……」 まだ泣きながら朝比奈さんはそう言う。 「でも、キョンくんは、ほ、本当に、佐々木さんに、ち、力を移したいんですか?」 そのとき、目の端で橘の表情が変わるのを感じた。 それまで余裕の笑みでいたのに、少し顔をしかめていた。 ──余計なことを言わないでください。 その表情はそう語っているように見えた。 それを見て、急速に俺の頭は回り始めた。 バカか俺は!! 今まで何をやっていたんだ!! 最初から橘は俺をはめる気でいたんだ。佐々木に能力を移すために。 何故かしらんが、それには俺の協力が必要らしい。 だが、俺はそのままでは協力しないだろうことは奴らにもわかっているはずだ。 だから、今回の件を仕組んだ。 仕組んだのは橘の組織ではなく、天蓋領域かもしれない。 少なくとも隕石は、橘の組織では無理だ。でもどっちでも一緒だ。 ハルヒの力を佐々木に移したいかって? そんなことは決まっている。答えはNOだ。 そりゃ、ハルヒの変態パワーがなければいいとも思うさ。 でも、そうしたらSOS団はどうなる? 俺以外の3人は、ハルヒの力があるから集まっている。 ハルヒの力がなくなれば、去っていく可能性が高い。 古泉は自分の意志で残ることも可能かもしれないが、長門と朝比奈さんは無理だろう。 そして、それが朝比奈さんをあそこまで強情にさせた理由だ。 朝比奈さんはSOS団の一員でいたいんだ。俺と同じように。 ハルヒもそうだ。SOS団がなくなるなんてことは許さないはずだ。 俺の判断でそんなことになったら、一生罰ゲームをやらされるに違いない。 全財産賭けてもいいね。 それに、佐々木自身、自覚してそんな力を持つことは辛いんじゃないのか? 世界に対する責任を持たされるも同義だ。まだ10代の、高校生の身で。 橘の機関にも、常に監視されることになるだろう。自由もなくなるかもしれない。 佐々木にそんな思いを味あわせるのも嫌だ。 ここで橘に協力しないで、ハルヒを助ける方法があるのか? 今はまだわからない。だが、今までにヒントはあった。 古泉の言葉を思い出して、俺は心を決めた。 賭けてみるさ。やっと俺にできることが見つかったんだからな。 だったら時間がない。さっさと動くとするか。 ハルヒが助かるのは既定事項に違いない。 そうでしょう? 朝比奈さん(大)。 やっとわかりましたよ。 俺は俺の気持ちに正直に動きます。 それがハルヒを助ける方法なんでしょう? 「朝比奈さん、すみません、そんなに泣かないでください」 「ほぇ? キョンくん?」 そんな涙目で見つめられたら抱きしめたくなるじゃないですか。 「俺が悪かったです。本当にすみません」 良かったら一発殴ってください、と言おうと思ったが、困らせるだけだろう。 しかし、早朝登校を続けていて良かったぜ。 こんな状況を登校中の北高生徒に見せていたら、男子生徒の半数から殺されるところだ。 「ちょっと、どうする気ですか?」 心なしか青ざめた橘が俺に問いかけてくる。 だが、俺はそれを無視した。 「ちょっと電話かけます」 朝比奈さんにそう言うと、電話を取り出して古泉を呼び出した。 「ちょっと無視しないでくださいよ!」 何か喚いているやつがいるが知るか。 『もしもし』 古泉が出た。今は閉鎖空間が出ていないのか。 「朝早くから悪い。頼みがあるんだが」 『なんでしょう?』 「俺を見張っているらしいから、近くに車があるだろう? 俺のとこに回してくれ」 歩いて行ってもいいんだが、時間が惜しい。 『どちらへ行かれるんですか?』 「お前のところだよ」 『えっ! 何ですか?』 「じゃあよろしくな」 驚いている古泉という珍しい物を見たかった、と思いつつ電話を切った。 「朝比奈さん」 「はっはい!?」 「一緒に行きましょう!」 「へっ? え、えーと、どこへですか??」 まん丸に見開いた目で聞き返してくる。 そんなの決まってるさ。 「ハルヒのところにですよ!」 車が現れ、俺たちが乗ろうとするのを橘が腕を引っ張って邪魔をした。 しかし、運転手の新川さんが下りて行くと、橘は引き下がった。 森さんもだが、新川さんも相当怖い。こうなると、古泉の本性が気になるところだ。 「古泉のところへ行くと伺っておりますが」 新川さんが俺に言った。 「ええ、お願いします。古泉に頼むのが一番早いでしょうから」 「かしこまりました。古泉は機関の本部におります。ご案内しましょう」 何を頼むのか、と聞かないのは訓練されているからだろうか。 新川さんは何も詮索せずに車を出してくれた。 しかし、朝比奈さんは当然聞いてきた。 「涼宮さんのところに行くんじゃないんですか?」 そりゃそうだ。さっき俺は朝比奈さんにそう言った。 「ええ、そうですよ。ただ、ハルヒに声が届きそうなところです」 「えっ? どこですか?」 頭の上に5個は?マークが飛んでいるだろう。 「今、病院にいるハルヒに話しかけてもまず届かないでしょう。 だったら、ハルヒの精神世界に入り込むしかないんです。確証はないですが」 「どういうことですか??」 「閉鎖空間に行くんですよ」 「ええええええ!?」 俺はあっさりネタ晴らしした。 確証はない。ただ、古泉はハルヒが俺を呼んでいると言った。 そして、それは閉鎖空間に入るとはっきりすると。 だったらあそこはハルヒの精神世界の一部でもあるはずだ。 俺を呼んでいるってのなら行ってやるよ。待ってろ、ハルヒ。 6.《神人》へ
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基本情報表紙 タイトル色 その他 目次 裏表紙のあらすじ 出版社からのあらすじ 内容 あらすじ「序章・夏」 「エンドレスエイト」 「序章・秋」 「射手座の日」 「序章・冬」 「雪山症候群」 挿絵口絵 挿絵 登場人物 後に繋がる伏線「雪山症候群」(伏線) 刊行順 基本情報 涼宮ハルヒシリーズ第5巻。2004年10月1日初版発行。 表紙 通常カバー…鶴屋さん、キョンの妹 期間限定パノラマカバー…森園生、キョンの妹、シャミセン、鶴屋さん タイトル色 通常カバー…青 期間限定パノラマカバー…緑 その他 本編…319ページ 形式…短・中編集 目次 序章・夏…P.5 エンドレスエイト…P.7 序章・秋…P.86 射手座の日…P.88 序章・冬…P.181 雪山症候群…P.183 あとがき…P.324 裏表紙のあらすじ 夏休みに山ほど、遊びイベントを設定しようとも、宿敵コンピ研が持ちかけてきた無茶苦茶無謀な対決に挑もうとも、 ハルヒはそれが自身の暴走ゆえとはこれっぽっちも思っていないことは明白だが、 いくらなんでもSOS団全員が雪山で遭難している状況を暴走と言わずしてなんと言おう。 こんなときに頼りになる長門が熱で倒れちまって、SOS団発足以来、最大の危機なんじゃないのか、これ!? 非日常系学園ストーリー、絶好調の第5巻! 出版社からのあらすじ 思えばハルヒに振り回された一年間だったわけだが、 遊びすぎな夏休み、パソコン部の逆襲、そして命懸けの冬休みまで味わった俺は、来年の苦労を思うと封印した言葉が出そうになるよ……。 絶好調シリーズ第5弾! 内容 短中編集の巻。収録されている「雪山症候群」は、後のストーリーに大きく関わってくる。 なお、「雪山症候群」以外はアニメ化された。 あらすじ 「序章・夏」 文庫化にさい書き下ろされた「エンドレスエイト」への導入部分。 「エンドレスエイト」 +... 大変だった夏合宿から帰ってきた後、しばらくハルヒ他SOS団のメンバーと会うこともなく、平和な夏休みを過ごしていた。 しかし、夏休みも後半に差し掛かった頃、ハルヒから突然集合命令の電話。 集合したSOS団のメンバーに「夏休みを全力で遊ぶ!」と宣言。その通りに毎日超過密スケジュールを強行するハルヒ。 だが、キョンには前にも一度体験したような既視感があり、その答えは想像以上に恐ろしいもので、朝比奈みくるや長門がキョンに言う。 「夏休みが終わらない」 長門によれば、夏休み後半を何千回とループしているのだという。古泉は、この原因はハルヒにあり、夏休みを終わらせたくないと思っているのだという。 ハルヒのやり残したこととは、一体何なのだろうか……? 「序章・秋」 文庫化にさい書き下ろされた「射手座の日」への導入部分。 「射手座の日」 +... 文化祭も終わり平和な日常を過ごしていた所にやってきたコンピ研部長他部員一同。 彼らは強奪したパソコンの返却をかけて自作のPCゲームで勝負を申し込んできた。 勝負事が大好きなハルヒは当たり前のようにその勝負を呑む。しかしコンピ研は負けたら、さらにパソコンをSOS団に進呈するという。 こうしてSOS団VSコンピ研のPCゲーム一本勝負が開始された。 「序章・冬」 文庫化にさい書き下ろされた「雪山症候群」への導入部分。 「雪山症候群」 +... 冬休み、鶴屋さんの招待で雪山にある鶴屋家の別荘に招待されたSOS団一同。 しかし、スキーを楽しんでいる最中、天候が急変。遭難しかけたSOS団一同の前に館が現れ、SOS団一同は館に入る。 だが館の中にいると次々と不可解な現象が起こる。脱出しようにもできない。そんな館にSOS団は閉じ込められてしまった。さらに熱で倒れてしまう長門。 古泉はSOS団を閉じ込め、長門を危機に陥れた犯人は情報統合思念体以上の力を持った何かだと推測しているが…… 挿絵 口絵 SOS団(エンドレスエイト) ⇒ 涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、長門有希(エンドレスエイト) ⇒ 涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、長門有希(エンドレスエイト) ⇒ 朝比奈みくる ⇒ 挿絵 「序章・夏」 挿絵なし 「エンドレスエイト」 P.37…涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、長門有希 ⇒ P.47…朝比奈みくる ⇒ P.67…涼宮ハルヒ、朝比奈みくる ⇒ 「序章・秋」 挿絵なし 「射手座の日」 P.93…SOS団 ⇒ P.103…キョン、朝比奈みくる、古泉一樹 ⇒ P.109…涼宮ハルヒ、コンピュータ研究部部長、コンピュータ研究部部員 ⇒ P.123…SOS団 ⇒ P.141…キョン、涼宮ハルヒ ⇒ P.157…長門有希 ⇒ P.173…キョン、長門有希、コンピュータ研究部部長 ⇒ 「序章・冬」 挿絵なし 「雪山症候群」 P.221…鶴屋さん、キョンの妹 ⇒ P.277…朝比奈みくる ⇒ 登場人物 涼宮ハルヒ キョン 長門有希 朝比奈みくる 古泉一樹 鶴屋さん 谷口 国木田 コンピュータ研究部部長 キョンの妹 新川 森園生 多丸圭一 多丸裕 後に繋がる伏線 「雪山症候群」(伏線) キョンの謎の記憶(古風な格好をしたSOS団) ⇒未回収 SOS団を異空間に閉じ込めた犯人 ⇒第9巻『分裂』で回収 古泉の「長門が窮地に追い込まれるようなことがあったとして、それが『機関』にとって好都合なことなのだとしても、一度だけ『機関』を裏切ってキョンに味方する」という台詞 ⇒未回収 刊行順 <第4巻『涼宮ハルヒの消失』|第6巻『涼宮ハルヒの動揺』>
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土曜プレミアム(2023.10~) ※提供クレジットは不定期・PTを除き絨毯の上にカラー表記 (2024.04~) 前半1'00"...Kao(花王) 0'30"...SUZUKI、積水ハウス、ソニー損保、KIRIN(キリンビール)、MITSUBISHI MOTORS(三菱自動車)、Panasonic 前半枠固定0'30"...Panasonic Homes、アサヒビール、学校法人 日本教育財団+不定期2社 後半0'30"...JT、Soft Bank、MITSUBISHI ELECTIRIC(三菱電機)、Afalc(アフラック)、小林製薬※2+AC JAPAN※1 後半枠固定0'30"...アイフル、アコム、プロミス(SMBCコンシューマーファイナンス)、レイク(SBI新生銀行グループ)、SMBC 三井住友銀行 (2023.10~2024.03) A枠1'00"...Kao(花王) 0'30"...SUZUKI、積水ハウス、ソニー損保、KIRIN(キリンビール)、MITSUBISHI MOTORS(三菱自動車)、Panasonic 前半枠固定0'30"...Panasonic Homes、アサヒビール+不定期3社 B枠0'30"...JT、ALSOK(綜合警備保障)、小林製薬、Afalc(アフラック)、MITSUBISHI ELECTIRIC(三菱電機)、Soft Bank+不定期2社、AC JAPAN※1 後半枠固定0'30"...アイフル、アコム、プロミス(SMBCコンシューマーファイナンス)、レイク(SBI新生銀行グループ)、SMBC 三井住友銀行 ※1 DAIHATSUが認証取得問題で提供自粛
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==陸中城下町== 谷口「WAWAWA忘れ物~」 町の女の子「あ、谷口様!」 谷口「やあ元気にしてたかいマドモアゼル」 町の女の子「元気ですっ!今日はどんな面白い商品を持ってきてくださったの?」 谷口「フ…そうだな、例えばこれなんてどうかな?」 町の女の子「これなに?」 谷口「ぶどう酒と呼ばれる向こうの酒だよ。口には合うと思うぜハニー」 町の女の子「ごくっごくっ・・・・・おいし~♪ありがとう谷口様!でもこんなもの何処で手に入るの?」 谷口「フ…向こうの商人と一発やるのさ。30代後半の女商人が狙い目でな、 声をかければ意外にホイホイ付いてくる」 町の女の子「きゃー!流石谷口様!!」 谷口「今晩・・・いいかな?」 町の女の子「それは御断りしますわ♪」 タッタッタッタッ 谷口「・・・・・」 ひゅうー…ぽつん キョン「いってえ…ここは?」 古泉「まだ洞窟の中のようです。どうやら別の位置に無事移動成功したようですね」 いきなり喋るな。顔が近いんだよ気色悪い 横を振り向くと、他の女三人衆もどうやら目が覚めたようで辺りを見回していた ハルヒ「ここ・・・何か部屋みたいね」 みくる「何か少し・・・変な感じですぅ」 長門「今までの洞窟内とは全く雰囲気が違う…何かが…来る!」 ==ぞわっ== 突如として背後に凄まじい殺気を感じた俺達は五人一斉に後ろを振り返った ???『船切り』 俺達の目の前に現れる巨大な剣 いや、これはおかしいだろう。術を唱えている暇すら・・・ 長門「炎術・火翔」 間一髪のところで長門の放った術が巨大な剣を止める。 しかしその風圧が俺達五人を大きく吹き飛ばす キョン「みんな大丈夫か!?」 ハルヒ「なんとか・・・っ」 古泉「長門さんのお陰です。正直、危ないところでした」 みくる「な、なんですかあ今の!?」 ???『盗賊共…貴様等に死を』 俺達の目の前に現れたのは巨大な剣を背負った巨大な男だった キョン「…!!」 ハルヒ「なによコイツ…」 海尊『我が名は常陸坊…常陸坊海尊…』 海尊『我が名は常陸坊海尊。何年も前よりこの洞窟に眠る我が主の財宝を守ってきた…。盗賊共よ…与えよう、貴様等に死を。与えよう、死して尚、永遠の苦しみを』 古泉「死して尚、永遠の苦しみ…?・・・・っ!!まさか僕達がこの洞窟で戦ってきた魂火や怨霧は…」 海尊『皆、我が主の財宝を狙いし愚かな輩共の者よ。この洞窟で討たれし者は、永遠に成仏する事も敵わん。』 みくる「そんなひどい・・・」 キョン「こいつ…」 海尊『盗賊共よ…罪深き貴様等にも同じくして、永遠の苦しみを与えよう』 古泉「…どうやら、今までの敵とは桁違いのようです。心してかかりましょう」 キョン「だな、だが俺達は絶対に勝って帰るぜ」 ハルヒ「五人で力を合わせれば負けないわ!!」 みくる「そうですっ!」 長門「油断は出来ない…」 海尊『死ぬがよい。醜い欲を持つ哀れな者共よ』 キョン「行くぜ!うおおおおおおおおお!!!俺の両手に集いし力の結晶よ!その力を今こそ解き放て!!!」 『炎術・双虎牙!!!』 ガオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!! 海尊【『獄裁剣…断罪』】 ズオンッ!!!!!!!! 巨大な破壊音と共に消滅する双虎牙 キョン「何!?」 海尊は一歩跨いでキョンの真正面に入る キョン「はや…」 海尊【『獄門剣・死招』】 古泉「陰陽道・火鬼!」 海尊『!?』 刀が振り下ろされる瞬間、古泉の放つ火の鬼が海尊に直撃し、それを追撃するかの如くハルヒの双剣がうねりを上げる ハルヒ「双剣・閃光双頭切りぃいいいい!!」 しかし海尊はすぐに体制を立て直し、天の術を放つ 海尊【『天術・大空剣』】 巨大なかまいたちは逃げ場を無くし、ハルヒを襲う ハルヒ「きゃああああああ!!」 その刃は彼女の体を容赦なく切り刻み、その場に倒れ込ませる キョン「ハルヒ!!ちくしょう!長門、連携で行くぞ!!」 長門「…了解した」 キョン『炎滅斬!!』 長門『氷術・大氷棘』 横からキョンの抜刀、縦から長門の放つ巨大なつららが海尊に襲いかかる。 だが海尊はつららを剣で切り落とし、抜刀を受けきり、反撃に転ずる キョン「な、なぜ止まるんだ…」 みくる「ああああぶないですうううう!!」 海尊【『獄門剣・閻魔斬』】 キョン「しまった!(避けきれない…)」 古泉『陰陽道・風鬼!!』 放たれた風の鬼はキョンを海尊の間合いから吹き飛ばし、海尊の剣は空を切る。 そこに長門とハルヒが双方から回り込み迎撃する ハルヒ「双剣・舞い切り弐条!!」 長門「地術・地面返し」 海尊【『獄門剣・九衒刹』】 刹那に放たれる閃光の全体切りで、ハルヒの抜刀と長門の技は往なされ、二人ともそのまま吹き飛ばされる [『冥界に蠢く死霊達よ…我が式神に封じられしその力を、今こそ解放されよ!!』] 古泉『陰陽道・幽軍!!』 海尊『!?(強い!?)』 式神から生れし恐ろしい霊の大群が海尊を襲う 海尊『ぬおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』 怨霊の大群を浴び、錯乱する海尊。 その後ろでは必殺の構えをとるキョンの姿があった 古泉「今です!」 キョン「ああ…準備は完了したぜ・・・喰らえ!!!」 炎上する剣を片手に持ち、キョンは全速力で錯乱している海尊の間合いに侵入する キョン===『『『奥義!!!炎獄緋双斬!!!!』』』=== 炎に塗れる闘剣は、ついに海尊の胴を捉え、華麗な鋭さを魅せた 海尊『馬鹿な…我が体よ……我が…』 胴の切り口から徐々に光が溢れ出し海尊はその場に倒れ掛ける。 誰もが勝利を確信したその時だった。 海尊『我が命…既に失われし、何人たりとも、我が主には触れさせぬ…』 キョン「何を言ってるんだアイツ・・・もう勝負はついただろう」 古泉「…まさか!!」 海尊『仏よ…我たる命授かりし者に慈悲の恵みを与えたまん・・・』 古泉「・・・やはり!陰陽道・火鬼!!」 海尊[『復元』] 海尊【『獄門剣・旋風斬』】 放たれた鬼の火は時遅くして海尊の剣に弾かれた 古泉「遅かったようです…」 ハルヒ「どういう事!?」 長門「…彼はあの場で、治療術を行使した」 キョン・ハルヒ「!?」 古泉「まさかとは思いましたが・・・彼はどうやら僧兵らしいです。生前のね…」 キョン「なんだと!?」 みくる「みなさあん!きますよぉ!!」 海尊【『獄門剣・閻魔斬』】 五人は素早くかわすも、剣圧でやはり吹き飛ばされる ハルヒ「…っ!あれだけ戦えて治療術まで行使出来るなんてそんな奴聞いたことも無いわよ!」 古泉「…いえ、一人だけ聞いた事があります…」 キョン「…!なるほど、俺も確かにある」 ハルヒ「えええ!?全く分かんないわ」 古泉「義経と共に生き、義経と共に戦った歴史上最高の戦闘能力を持つ僧兵…」 ハルヒ「…! まさか!」 古泉「そう、そのまさかです。彼の真の名は、【武蔵坊弁慶】。紛れもなく伝説の僧兵です」 海尊【『天術・大空剣』】 長門「炎術・火翔」 海尊の放つ巨大なかまいたちに対し、長門は炎の翼をぶつける。 だが、巨大なかまいたちは炎を飲み込み長門を切り刻みかけた、その刹那 古泉「陰陽道・土鬼!」 土の鬼が現れ、身代わりとなり切り刻まれる 古泉「大丈夫ですか長門さん!?」 長門「いっくん…大好き(ぎゅう)」 古泉「ちょ、ちょっと長門さん!来てますから!来てますからって!!」 ビュン!! 海尊【『獄門剣・死走』】 風の力で速度を上げ、海尊は古泉と長門に容赦なく切り込む キョン「炎術・火走!!」 海尊『ぬうっ!』 炎を切り潰し、剣をキョンに向ける海尊 キョン「お前の相手はこっちだ!」 海尊『おのれ…』 古泉「長門さん…離れていて下さい。この術は少々危険ですので」 長門「…わかった」 海尊【『獄門剣・閻魔斬』】 キョン「負けるか!炎滅斬!!」 古泉―『陰陽道-悲観』― 海尊『!!!』 激突の刹那、瞬く間に黒い霧が海尊を覆い、包む込み 古泉「…終わりました」 ハルヒ「えっ!?なにをしたの?」 古泉「彼はあの黒い霧から出てきません。少なくとも、あと数時間はね」 長門「…素敵、いっくん」 ハルヒ「…詳しく説明して古泉くん」 古泉「その前に、あそこで伸びている彼を起こさなくては」 ハルヒ「あ、そういえばキョンのことすっかり忘れてたわ…」 涼宮ハルヒの忍劇8
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==刀は望んでいる。より鋭利な見衣を== ==刀は欲している。より多くの鮮血を== ==安土城== 鬼道丸『…』 一刀斎との戦いに於いて手にした妖刀・村正 その紅き力に染まった剣を見つめながら、鬼道丸は考えていた 鬼道丸(この刀に精度を搭載する理は無い…しかし容は如何だ?端麗な容とは言え余りにも貧弱…力と対比するに余りに滑稽…この刀、いや剣は一度打ち直す必要を感じる…) ???『帰ったか鬼道丸』 鬼道丸『夢幻坊か…』 夢幻坊『信長様を森蘭丸一人に押し付けてまで手にした妖刀…何ぞ不満でもあるのか?』 鬼道丸『生きて居られた故問題は無い。今、大殿は何処に?』 夢幻坊『美濃の洞窟に籠っておられる。覇王たる力だ…信長様と謂えど扱い難たし…と言った所だろう』 鬼道丸『そうか…私は宗兵衛の元へ行く』 夢幻坊『妖刀を鍛えることに関しては随一と呼ばれるあの名匠の処へか…』 鬼道丸『今暫くの留守を頼む』 夢幻坊『雷凰丸にそう伝えておこう。俺は俺で忙しい身なのでな』 鬼道丸『…了解した』 夢幻坊『宗兵衛は相模、か…』 その後、俺はハルヒに山のような忍具を購入させられ、朝比奈さんはお茶の葉を、長門は本を、古泉は吹き矢を、各々が自分の買い物を済ませた時点で宿屋に戻る事になっていた・・・筈なのだが、朝比奈さんも長門も古泉も自分の満足する品を探し出せなかったらしく、結局この日買ったものは大量の忍具だけとなってしまった。 何を買ったのかって? ハルヒが独断でホイホイ積んでったもんだから俺には全くもってわからん 一つだけ確実に言える事は、俺の財布が更に軽くなったということぐらいか・・・ 古泉「とりあえず今日はもう宿屋に戻って休息を取りましょう」 キョン「そうだな、とりあえずお前と朝比奈さんと長門は明日にでも探しにいけばいいさ」 古泉「ええ、明日は朝からもっと慎重に探しますよ」 みくる「あたしも行きますよぉ古泉くん」 長門「だめ」 みくる「ふえ?」 長門「いっくんは私と一緒」 みくる「そ、そうでしたね。私は一人で探しますからいいです・・・」 キョン「おい長門、朝比奈さんだって仲間だぞ?三人で一緒に行けばいいだろう?」 長門「いっくんと二人でデートする」 キョン「あのな…仕方ない。朝比奈さん、明日は俺と一緒に探しましょう」 ハルヒ「あたしも一緒に行くわ。みくるちゃん」 朝比奈さん「キョンくん…涼宮さん・・・ありがとうございますぅ・・・ふえっ・・ううう・・」 キョン「な、泣かないで下さい朝比奈さん」 ハルヒ「有希~」 長門「・・・・ぷい」 ハルヒ「全くこの子は・・・」 町の女商人「きゃあー!!」 キョン、ハル、古、長、みく「!?」 キョン「今向こうの方で声が聞こえなかったか!?」 古泉「何かあったようですね。行ってみましょう」 武士A「俺達にこんなパチモン押しつけやがって!!ふざけんなよこのアマぁ!」 女商人「パチモンなんかじゃありませんっ…ちゃんとした短刀です!」 武士B「口答えする気か!?殺すぞおらぁ!?」 女商人「・・・・っ」 武士C「おい!こいつやっちまうか?」 武士D「そりゃいいな!」 武士A「よし、服をぬがせろ!」 キョン「なんだ周りの奴らは?見て見ぬふりか?」 古泉「干渉することを拒んでいるように思えます」 ハルヒ「なんって腰の抜けた町民たちなの!?こうなったらアタシ達が止め…」 ドキュゥン!!! ???「やめたまえ君達」 みくる「じゅ、銃声ですぅ!ふええっ」 古泉「音から察するに短筒…それも最新式のものです」 キョン「あいつが撃ったのか…」 短筒を肩に抱えているその男は、長身でクールな雰囲気を装い、目に妙なものを掛けていた 武士B「なんだてめえは?武士たる俺様達に短筒を向けるとは何事だ!?」 ???「君達が武士だと?私には下郎にしか見えん。武士とは誇り高き雄の名を指す」 武士A「こいつ死にたいらしいな?いいだろう、殺してやるぜ…てめえら周り込め!!」 四人の武士達は短筒を持つ男の四方に周り込んだ 武士A「この距離ならお得意の短筒も使えねえんじゃねえか?」 ???「ふん、愚かな」 武士D「こいつっ」 武士A「…いいだろう、てめえらかかれっ!」 武士B、C、D「おおおおおお!!」 ???「はっ!」 クールな男は、武士が無造作に振り下ろす剣を華麗に交わし中段蹴り、回し蹴り、上段蹴りと三人の武士に攻撃を尽く命中させる。 三人の武士は気絶し、その場に倒れ込んだ 武士A「ひっ…」 ???「次は君の番だ」 武士A「み、見逃してくれぇ」 ???「残念だがそれは不可能だ。私の拳足を叩き込み、その曲がった性根を正してくれよう」 武士A「ひ、ひいいいっ」 ???「そのぐらいにしておきましょう」 俺達が後ろを振り返ると、今度は非常に可愛らしい少女がそこに立っていたー この子も中々のもんだー これも相模美人と言うのだろうか?いやいや、格好からして旅のお方か? しかし服装がどことなく古泉に似ているのが何とも悔やまれる ???「しかしだね、喜緑君」 喜緑さん「私は外傷を与えて自分の行為を改めさすより、こっちの方がいいと思うんです」 その可愛らしい少女(クールな男いわく喜緑さんと言うらしい。可愛らしい名前だ)は何やらブツブツと唱え始めた するとが武士のやつが何やら悶え苦しみ始めたじゃないか そして武士の周りには黒い何かが見える。 これはまさか・・・ 古泉「呪術、でしょうね。しかし式神とも仙術とも違う…彼女はどうやら飯綱使(いづなつかい)のようです。」 喜緑さん「この世に留まりしこの世たらざる者、この愚かしい者に断罪を与えなさい」 武士「うっうぎゃああああああああああああああああああああああああああうああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」(おっ俺の頭の中を何かが食いちぎってっ…) キョン「あれはなんで叫んでいるんだ」 古泉「おそらく幻覚を見ているのでしょう。成程、確かに肉体的な罰より精神的な罰の方が、より一層効果的ですからね」 ???「よし片付いたな。行くぞ喜緑くん」 喜緑さん「あん、待って下さいよぉ」 未だに大声を上げ苦しみ続ける武士を尻目に、その二人はこの場を去って行った キョン「さっきお前が言ってた飯綱使ってのは一体なんなんだ?」 古泉「まず初めに『道士』とは何のことかご存知ですよね?」 キョン「強力な術を駆使する奴らのことだろう?」 古泉「まあ、そのような者です。術を中心とした戦闘体系を取ります」 キョン「現にお前がそうだしな」 古泉「次に『道士』は陰陽師、方士、飯綱使に分けられます」 キョン「陰陽師は式神、方士は仙術だったな」 古泉「その通りです。そして飯綱使とは神通力を手に入れ、妖術使いとなった者のことを指します」 キョン「それで、あの麗しい御方はその飯綱使とやらって訳か」 古泉「ええ、彼女は間違いなくそれです」 キョン「そうか…飯綱使でも何でもいいからもう一度お会いしたいもんだー」 古泉「涼宮さんに聞かれたても知りませんよ僕は」 キョン「う…」 俺達五人は宿屋に戻ると、一日の疲れを取るべく温泉に入り夕食を取る事にした。 相模宿屋の女将「本日は宴会所の方で晩餐をお願い致します」 ハルヒ「なんでよ?部屋まで持ってきてくれないの?」 キョン「宿屋によって違いがあるんだろう。文句を言うな」 ハルヒ「まあ、それもそうね」 ==宴会所== ハルヒ「へー結構広いわね!」 キョン「だが客は余り入っていないようだな」 二十畳ぐらいある広間に机が六個 宿屋の宴会所にしてはまあまあ広い方である 俺達五人は奥の席に座り、とりあえず酒を注文した。 ちなみに席は、俺・ハルヒ・朝比奈さんが隣同士、古泉・長門が隣同士ってな感じだ この席順は無論、長門の要望である ハルヒ「それにしても相模は高いのよ!売り物にしても宿屋代にしても!」 キョン「ハルヒよ。もう少し小さな声で頼む」 ハルヒ「しっかも激安とか言ってる商人がいるから行ってみたら何よあれ!普通に伊勢の方が安いってもんだわ!本当にどうかしてるわよ!!」 キョン「だ、だからもう少し小さな声でな…」 ハルヒ「あーもうむっかつくー!!」 古泉「僕達が周ったのはほんの一部ですし、明日は北の市場を中心に周ってみましょう」 ハルヒ「そうね。もしかしたら単に南の市場が高かっただけかもしれないし」 みくる「そうですよぉ!有名な商業港なんですからもう少し安いはずですぅ!!」 ???「そんなことは無い。この城下町は単に各地から商人が集まってくる事で有名となっただけで在って、売値が安いと言う可能性は非常に考えにくい」 ハルヒ「まだ分らないわよ!もしかしたら…ってかアンタ誰よ?」 俺達が声の方を振り向くと、そこには変な物を目にかけているクールな男と、かわいらしーい少女がにっこりと微笑んでいた 古泉「おや?あなた方は夕方見た…」 ???「夕方?ああ、あの成って無い武士達を少々教育していた場面かね?」 古泉「ええ、そうです。中々素晴らしい腕を御持ちのようで」 ???「あんなものは余興にすらなるまい。それより話の続きだが、相模は品数の町だ。商品自体の安さを求めるなら、安芸や出雲の城下町辺りが良いだろう」 古泉「これは耳寄りの情報を有難う御座います。」 ハルヒ「ふうん、そうなのね・・・」 みくる「めもめも」 キョン「それより貴方達は何者なんです?あの体術にしろ幻術にしろ、それから…」 古泉「短筒、ですね」 キョン「そう、それだ」 ???「私達は全国を旅して周っているものだ。とある理由があってな」 喜緑さん「私の名前は喜緑江美里と申します。こっちの方は眼鏡の人とでも呼んであげてください」 ハルヒ「アタシは涼宮ハルヒ!あっちの美少女がみくるちゃん。カッコイイのが古泉君。可愛らしい子が有希。マヌケ面がキョンね」 その自己紹介には聊か抗議を行いたくもあるが、ここは抑えておこう 喜緑さんも朝比奈さんもいるしな ハルヒ「ところでメガネって何よ?」 喜緑さん「南蛮の方で流行している商品で、あれを掛けると物がよく見えるんですよ」 ハルヒ「へー。面白そうね」 眼鏡の男「言っておくが、この眼鏡は貸さんぞ。本題に戻るが、私は自分の名前を探して旅をしているのだ」 キョン「名前…ですか?」 眼鏡の男「ああ、私は二年前以降の記憶が無くてな。その記憶を見つけるべく、私は黄緑君と共に旅を続けている」 古泉「なるほど、二人で各地を旅してきた訳ですね。それならば、あの実力も納得は出来ます」 喜緑さん「貴方達は何故旅をしているのですか?」 キョン「目標がありましてね。そんな大層なもんじゃないですよ~えへえへ」 ハルヒ「キョン?何をデレデレニヤニヤしてるの?」 キョン「そっそんなものはお前の見間違いだ!!俺は決して黄緑さんと一つに成りたいなどと言う不純なことは考えていない!」 ハルヒ「へぇ…そんなことを考えていたの?」 しまった!なんというミスを犯してしまったんだ・・・ フロイト先生も爆笑だっぜ☆ ハルヒ『『キョンの…バカぁー!!!!!!!!!!』』 涼宮ハルヒの忍劇10
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「さっそくだけど、あたしの名推理を披露するわ!」 腕に「名探偵」という腕章をつけたハルヒがそう宣言した。 「まず状況を整理するわね。古泉君は今来たばっかだし。」 「そうして頂けると、ありがたいです。」 「あたしとキョンは一緒に部室に来た。でも鍵がかかってたのよ。 中でみくるちゃんが着替えてるのかと思ったけど、返事が無かった。 だからキョンと一緒にスペアキーを取りに行ったのよ。そうよね?キョン。」 「ああ、そうだ。」 「でも職員室の前でみくるちゃんと会ったの。だから不思議に思ってね。 あたしとキョンとみくるちゃんの3人で部室に入ったら、コレよ。」 ハルヒは無惨な姿になったパソコンを指差した。 「それで鍵は部屋の中に落ちていたわ。つまりこの部屋は密室だったってワケ。 でも窓は開いてたから、恐らくそこから脱出したと思われるわ。 ロープも下に落ちてたしね。」 「で、でもぉ、ロープで降りたりしたら目立つんじゃぁ……下は人が多い場所ですしぃ。」 「下に逃げたとは限らないわ。犯人は、横に逃げたのよ。」 「横、ですか?」 「そうよ。横の教室は今は使われてないわ。 それを利用して、この部室の窓と隣の部屋の窓にロープで道を作ったのよ。 そしてそのロープを使って隣の部屋に逃げた……そんなとこね。」 「では、この事件の犯人は?」 「私達に恨みを持つ外部の人間ね。まだ特定は出来ないけど、コンピ研部長とか怪しいわね! あとは締め上げて吐かせれば……」 「そこまでだ、ハルヒ。」 俺はハルヒの「名推理」を遮った。もうこれ以上、コイツに推理させるワケにはいかない。 それは、犯人の描いたシナリオに乗ってしまうことになるからだ。 「何よ、せっかくいいところだったのに!文句あるわけ?」 「ああ。このままだと間違った結論に導かれてしまうからな。 このトリックには無理がある。例え隣の部屋だとしても見られたらどうしても目立ってしまうだろ。 それに、ロープ伝いに隣の部屋に移動なんてよほど運動神経が良くなければ危険すぎる。 少なくとも、コンピ研部長には無理な話だ。 お前の推理は間違っている。……いや、あえて『間違えた.』」 「……何が言いたいのよ。」 ハルヒがそう言ってきた。分かったさ、そういうなら言ってやる。 俺は『犯人』を指差した。 「この事件の犯人は、ハルヒ、お前だ。」 俺は他のヤツらの顔を見た。 朝比奈さんは気絶するんじゃないかと言うほど驚いた顔をしている 逆に古泉はそうでもない。ある程度予測はついていたんだろう。 長門は、まあいつも通りの表情だ。 「な、何バカなこと言ってるのよ!」 そしてハルヒ。平静を装ってはいるが、明らかに動揺している。 「思えば始めからおかしかった。お前が俺の掃除を待つ、なんてな。 だが今考えれば納得だ。お前は待たなければならなかった。 何故なら、俺と一緒にパソコンを『発見』しなければならなかったからだ。一人で見つけちゃ意味ないんだ。 部屋が密室状態だったと証言してくれるヤツがいないとな。」 「そうよ!密室だったじゃない!それはどう説明するのよ! アンタが言うには、あたしの説明したトリックはダメなんでしょ?」 「ああ。もっと単純な方法さ。お前は普通に、鍵をかけて外に出たんだ。 そのまま鍵を所持しておく。スペアキーを取りに行った時も、実はお前は鍵を持っていたのさ。 そして部室に入り壊れたパソコンを発見する。そのインパクトに俺と朝比奈さんが注意をひかれている隙に、 お前はそっと鍵を部屋の中に落とし、自分でそれを発見した。 そして自らが『名探偵』となって、間違った結論へ導こうとしたんだ。 あのロープは、お前があらかじめセットしておいたものだな?」 「ち、違……」 否定はするが、もはや態度で分かる。間違いなく犯人はコイツだ。 何故俺がこの真相に気付けたか、それは古泉のおかげだ。 何よりもハルヒを優先する古泉が遅れる理由なんて一つしかない。そう、閉鎖空間だ。 恐らくハルヒはパソコンを壊してしまったことでストレスを溜め、閉鎖空間を発生させた。 更にこのトリックを成功させられるかどうかで不安になり、古泉の仕事を長引かせた。 古泉にはご苦労様としか言い様が無いな。 そして俺は、最後のひと押しをする。 「まだ否定するのなら、職員室に確認をとっても構わないぜ? お前が昼休み、鍵を取りに来なかったか、ってな。」 ハルヒはその言葉を聞くとうつむいた。……これで終わり、か。 「そうよ!あたしが壊したのよ! 昼休みここに来たらコードに足ひっかけてね!悪い!?」 おお、開き直った。 「まあそれは自業自得だから悪くないがな、誤魔化そうとしたのは頂けない。」 「しょうがないでしょ!団長がこんなミスしたなんて知られたくなかったもの!」 「それであわよくばコンピ研のせいにして新たなパソコンを、ってか。」 「う……」 「みんなはどう思う?」 俺は他の3人に意見を求めた。 「……良く無いと思いますぅ。涼宮さんがこんなことするなんて……」 「コンピ研に何の罪も無いはず。無実の罪を押しつけようとした涼宮ハルヒは、私の概念では、悪。」 「今回ばかりは賛同しかねますね……涼宮さんに非があると言えるでしょう。」 それぞれ批難の言葉をかける3人。まともな反応で良かったぜ。 これで世界のためだとか言って俺が悪者にされたらキレてたところだ。特に古泉がやりそうだったからな。 いくら世界を変える能力を持つ人間だからと言って、なんでも許されるワケじゃない。 今回のことはきっちりとけじめをつける必要がある。 「パソコンはお前が全額負担しろ。そんでコンピ研の連中に謝りに行ってこい。今までのことも含めてな。」 で、その後ハルヒを連れて、コンピ研に謝りに行った。 ヤツらはなんのことだかさっぱり分からんという顔をしてたがな。まあ巻き込まれたことも知らんだろう。 古泉曰く、閉鎖空間は発生しなかったということ。 反発では無く、ちゃんと自分の非を認めているからだとかなんとか。 俺の行為が世界を滅ぼすことにならずにすんで良かったぜ。 そして帰り道、俺はハルヒと二人で歩いている。 「ねえキョン」 「なんだ?」 「まだ、怒ってる?」 ハルヒがしおらしく聞いてきた。こういうハルヒも貴重だが、やはりいつものテンションが無いと物足りない。 ……そろそろ許してやるか。また古泉の仕事が増える前にな。 「もう怒ってねーよ。ちゃんと罰も受けたからな。」 「ごめんなさい……」 「もういいから、明日からはいつも通りになってくれ。 しおれてるお前もなかなかレアだが、やっぱいつもの方がお前はいいと思うぜ。」 「……うん、分かったわ!」 今日はやけに素直だな。まあどうせ明日からは引っ張られる日々が戻ってくるんだろうが…… それならそれで構わないさ。だが、今回のようなことはこれっきりにしてくれよな? 終わり
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俺は最近よく夢を見る。 普通、夢ってのは起き立てのころははっきり覚えていて、いい夢ならずっと覚えていよう、悪い夢なら すぐに忘れようと思ってしまうわけだが、いい夢だろうがなんだろうが、基本的に数時間経つとアウトライン すらはっきりせず、一日も経ると夢を見たことすら忘れてしまう。 でも、最近俺が見る夢は違うんだ。 ずっと覚えている。何故か。 内容は俺にも良くわからない。 ただ、目の前に焦土と化した大地があるだけの夢。 歩いて何処かにいくわけでもなく、かといって何かを考えるわけでもなく、 ただ、焦土と化した大地を眺めているだけの夢。 そこには俺以外の誰も介在しない。 ただ、俺と赤茶げた大地だけが在る夢。 唯一聴覚のみ開け、耳は悲しげな歌を拾う。 どんな歌かは判らないが、心の底から震えてしまうほど悲しげな歌が流れる夢。 夢は必ず覚めるもの。 だが、その夢だけは、何処か現実的で、覚める気配が全くしそうに無い夢。 ・・・とはいいつつも、やはり夢なので覚める。 奇妙な虚脱感に襲われながら。 まぁ、変な夢を見ようが世界はいまだハルヒ中心に回りやがる、そんな日々。 Sing in Silence ~涼宮ハルヒの融合~ 気がつけば2年生になってしまっていた究極凡人にして、 名前はあるが誰も本名で呼んでくれない悲しき高校生こと俺、キョンである。 SOS団なる恐らくこの都市、いやこの世界一奇妙かとも思われる学校非公認団体は、 某超能力者団体の息がかかる「自称」悪の生徒会会長からの圧力を受けたり、 SOS団並に奇妙な団体から事実上の宣戦布告をされたりしながらも、結成二年目に入ろうとしている。 俺やハルヒを含めて皆この一年で色々と変わった。多分最も変わったのは俺だろうが、誰も褒めてくれなどはしない。 まぁ、褒めてくれたところでどうなるわけでもないけどな。 残念ながら、この学び舎は一年の間に変化を遂げることは出来なかった。 来るべき夏に備えてクーラーを取り付ける気配も無ければ、誰かが扇風機を持ってくるような気配も無い。 そして、俺の後ろの席がハルヒ以外の誰かになることも、この一年の間遂に無かった。 ハルヒのトンデモ能力の所為なんだろうが、迷惑極まりないぜ。 そんな人に迷惑をかけることだけを考える生命体こと涼宮ハルヒは、俺の後ろの席でなにやら鼻歌を歌いながらノートに書きなぐっている。 授業中なら教師からの叱責等が必要になってくるだろうが、放課後なので特に俺も気にしない。いつもの事だしな。 「何描いてるんだ?ハルヒ」 なにやらどこぞの前衛ファッションデザイナーが書くような、一歩間違えばセクハラ、いや猥褻物陳列罪で検挙されてもおかしくないようなデザインの服を書きなぐっていた。 いやはや、絵心だけは人一倍、いや二倍はあるようだな。 「ナース服やメイド服とかだけじゃ飽き飽きしない?結成二年目に入ったことだし、みくるちゃんにはあたしプレゼンツな服でも着せようかな、と思ってさ」 やめとけ。そんなもの着せて朝比奈さんをうろつかせて見ろ。退学どころの話じゃなくなる。全国紙沙汰になるぜ。 「そりゃそうだけどさぁ・・・」 一年でちょっとは良識を持ったかに思われたハルヒだが、俺の見当違いだったみたいだな。 ハルヒはハルヒだ。まぁいざとなったら俺と長門と古泉でとめてやるから、好きにしてろ。 「ねえキョン」 何だ。 「あんた、何か願いってある?」 「何だ唐突に」 「あんたみたいな凡人だって、願いのひとつやふたつあるでしょ?」 ハルヒがこのまま何もやらかさず、まっとうに人生を送ってくれればそれでいいんだが、んな事言えるはずも無く 「・・・金塊、いや最もキロ単価の高いレアメタル塊でもいい。そんなのが家の庭から見つかれば良いな、とかなら」 「そんなの掘れば出てくるでしょ。もっとデッカイ願いを持ちなさい、デッカイのを!」 掘っても出てこないから言ってるんだろうが。そもそもデッカイ願いってなんだよ。 「そうね。反地球が実際に現れるとか、火星に突如として文明が興るとか・・・」 やめてくれ。宇宙戦争に発展しかねん。 「何よ。自分ひとりの事しか考えられないようなヤツに言われたくはないわ」 へいへい。 「まぁ、実際に現れたら現れたで困っちゃうだろうとは思うけどね」 「だな。だから、そういうのは『願い』じゃなくてあくまで『妄想』として片付けておくことをお勧めするぜ」 「あんたも人のこと言えないわよ」 違いないな。 「ともかく、あたしはみくるちゃんの衣装デザインに専念するから、あんたは先に部室にでも行ってなさい」 「了解した」 と生返事を返しつつも、俺は先刻のカバンおよび机の中身の大掃除によって生まれた不要不急書類(といっても小テスト類だが)の整理作業が残っていた。 ゴミ箱に突っ込むわけにも行かないので、簡単に整理することにした。 俺は小テストの結果を見返しながらため息を漏らし、後ろでハルヒはStratovariusのPapillonボーイソプラノパートを 口ずさみながらノリノリでカキカキしている。少しはその元気を俺に分けて欲しいもんだが。 気配だけだと、小学校にも上がらないくらいのガキがクレヨンでキャラクターを書きなぐっているような感じだ。 中身はガキ同然というか、体は大人、頭脳も大人、ただ精神構造のみ子供な迷団長様、絵を描くならもうちょっと静かに 描いてくださいませんか?とか脳内で文句を言いつつも、不要不急書類の分別に徹していた俺。 唐突にシャーペンの音と歌声が消えたが、まあ飽きたんだろうと思いつつしばらく作業を続けていたが、 それにしても物音がしなさ過ぎる。 まさかと思って後ろを振り向いた。 ハルヒが居なかった。 広げてあったであろうノートや筆記用具類、果てはカバンまで無く、その状態からもう部室にいっちまったのかと思ったが、 あのやかましい女が物音ひとつ立てずに俺の後ろから消え去る、なんてことがあるだろうか、としばらく思案をめぐらすも、 まあたまにはあるだろう。ひとまずそういうことにしておいた。 と言うわけで俺も早々に机のものを片付けて、いつもの様に部室棟へと行き、 いつもの様に部室のドアをノックしたわけだが、返事は無い。 あの可憐な上級生はいらっしゃらないのか?と思いつつ下着姿の朝比奈さんを拝めたらいいなぁとかも思いながら ゆっくりとドアを開けると 「まっていた」 俺が人の気配に気がつく前に、冷涼とした声が俺の耳に届いた。 長門だ。ハルヒは居ない。帰りやがったのか? ともかく、長門が自分から話しかけて来るなんて珍しい。何か問題が発生したんだろうとは思うが。もう慣れたぜ。 「どうした?またハルヒが何かやらかそうとしてんのか?」 窓際のパイプ椅子に腰掛けていた長門は、読んでいた分厚いハードカバー本をパタンと閉じ 「この時間平面上の情報が一部欠損、もしくは完全に置き換わっている。涼宮ハルヒ、朝比奈みくるがこの時間平面上から消失した。原因は不明」 えらくとんでもない事言ってくれるじゃないか。 「どういうことだ?」 カバンをひとまず机の上に投げ捨て、長門の前に行こうとする・・・が、なんだか様子がおかしい。 目の前に居て、実際に俺と話もしているのに『存在感』が一切無いんだ。 ・・・おまけに半透明だ。 「不明。私のエラーに起因する問題でないことだけは確か。それ以外は不明。私自身の存在確率維持も危うい状態。あなただけが頼り」 心なしか悲しそうな色を目に浮かべながら 「お前も消えちまうのか?」 「もうじき消える。全インターフェースおよび情報統合思念体とのコンタクトが不能―――――今すぐ、鶴屋家へ。鍵が見つかる――」 「長門っ!!」 あっという間だった。長門の声に一瞬ノイズ入ったかと思うと、次の瞬間音も無く長門は微粒子に帰した。 まるで雪が待っているように、長門を構成していたであろう微粒子が空間を漂っていたが、俺が放心している間に、いつの間にか消えちまった。 鶴屋家・・・って鶴屋さんの家だよな?鍵って何だよ。 だが、長門が行けっていうのだから、行くほかあるまい。 とにかく急ぐべし。何故か校門前に止まっていたガチホモマッガーレ印の 黒塗りタクシーに飛び乗って鶴屋家の前にやってきた。 恩に着るぜ古泉。 だが、ここからどうすればいいんだろうか。例によって入ろうにも門戸は硬く閉ざされているし、 インターホンを押すのも憚られる。だって、鶴屋家に来た理由が理由だからな。 話のわかる相手がインターホンに出てくれるとは限らないし。 うーん。この重いかんぬきのかかる門が自動ドアなら良いのにとか思っていたら、 ギィ、と音を立てて開いた。 鶴屋さんの話だと、インターホンだけじゃなくて監視カメラもついてるらしいから、 俺が門の前でうろちょろしてるのみて怪しまれたか。それとも鶴屋さんが助け舟を出 してくれたか。 「どうぞお入りください」 少なくとも、両方違ったようだ。おそらく鶴屋家の使用人か何かであろう女性が が開いた門から出てきた。 こちらの用件など聞かずに付いてくるよう促した女性に、ひとまず付いて行く事にし た俺は、例によって広い庭を抜け、これまた広い玄関をくぐり、長い廊下を歩き、客 間らしき広い和室へと通された。 意外にも、そこには先客が居た。 鶴屋さん?朝比奈さん?ハルヒか長門?古泉?いや、それら誰とも似つかない、年のこ ろ20中盤と言う感じの男が。 古泉に見習わせたいくらいの全く嫌味の無い笑顔で 「君か。常々話は聞いている。ま、そこに座ってくれると有難い」 と、男は自身の目の前に置かれた座布団を指した。 座ると、俺はまず男を精査すべく、失礼にならない範囲でまじまじと見つめた。 ダークスーツにネクタイ、タイピン。胸ポケットにはサングラスも入っているよう だ。いわゆる「メン・イン・ブラック」のようにも見える。 「さて、最初は世間話でもしてお互いを良く知るのが、初対面同士が打ち解けるきっかけになると 誰かさんは言ったが、悠長にそんなことやるような時間的余裕も心的余裕も無いはずだ。早速本題に入ろう。 まず、君は俺にいくつか聞きたいことがあるはずだ」 早速お見通し、ってヤツか。 まず、何を聞こうか。3人が消えたこと、長門から鶴屋家に行けと指示された理由、それから・・・ 「あなたは誰です?」 俺、いやSOS団の全てを知っている気がする。この男は。違いませんか? 「ご名答。君が、いやSOS団員各々が知りうる全ての情報を知っているつもりだよ、俺は」 宇宙人、未来人、超能力者、別な勢力の宇宙人、別な勢力の未来人、別な勢力の超能 力者と会ってきて、まだ遭遇していないものといえば異世界人だが、大概のことを知っているとなると少々違うものかもしれない。 「私は・・・そうだな。シュルツと名乗っておこう。何、固有名詞ほど往々にして不確かなものは無い。 少なくとも、我々にとってはね。時と場合、場所において使い分けていくものだ ―――と、んなことはまあいい。君は、俺を何だと思ってる? さしずめ異世界人か何かと思ったけど、何か違う、みたいなツラしてるけどさ」 そうだ、その通り。もしかしたらこの人、俺の心でも読んでるのか? 「我々は表情から心を読み取る程度の読心術を身につけてはいるが、流石に人の心を全て見透かすような高度な技を会得しては居ない」 「読んでるじゃないですか」 「まぁ、それくらい誰にだってできる。君だって、ある程度長門君や朝比奈君、そして涼宮君の心中を察することぐらいはできるだろう?」 それは一年間の努力の賜物ってもんだ。 「・・・まぁ、そうだな。ま、こんな話を続けていても不毛だ。そろそろ俺の正体を 明かしておく」 シュルツ氏は使用人さんが用意してくれたお茶を一口くちに含んで一間置くと、 「俺は外宇宙人・・・とでも言おうか」 あの時と同じように、世界は停止したかに思われた。 ずずっ、と氏がお茶をすする音だけが良く響く。 俺は悠長にお茶を啜るほど心に余裕は無かった。 そもそもなんだよ外宇宙人ってのは。まだ異世界人ならわかるような気もするけどな。 「相当困った顔をしてるな。まあ仕方が無い。そもそも、君たちが『観測』すること によって成立しているこの宇宙だが、知性が高度に発達した、この地球に住まう有機 生命体が現在持ちうる観測手段すべてを有効に用いたとしても、外宇宙のことを知る ことはまだ適わない。ま、ある程度観測結果から予測することはできているようだ が、あくまで仮定であり、真実ではない。それ『らしい』ということしかわからないからね。 だから君が俺を理解できるはずはない。なので『外宇宙人という人らしい』という認識 で十分かまわない。 ん?まだ何か知りたいという顔をしているようだな。当たり前だな。 こんなことを言われて『はいそうですか』と話を畳める人間など居よう筈も無いしね」 よく判ってらっしゃる。 「具体的に、外宇宙人、もとい貴方は何者なんです?」 「まあ、先ほど言ったようにあくまで『らしい』ということで十分、ってのは判って くれたとは思うので、以下突拍子も無い話をするが耳かっぽじって良く聞いてくれ」 再びお茶を一口くちに含んで一間置くと、 「俺は、全ての宇宙を統括するアカシックレコードより派遣された、事象管理者の一分子だ」 ・・・なんだって? 「徹底的に平たく言ってしまうと、歴史を変革する手助けをする人々の一人だ」 全然平たく無いぞ、お兄さん。 飛鳥本あたりを愛読してる、超能力宇宙人ユダヤ人の陰謀何でも大好き兄ちゃんなのだろうか。 そういや何かのトンデモ本で見たが、アカシックレコードってのは「過去、未来すべての歴史が記されている”存在”」らしい。 ってことは、長門の親玉よりとんでもない存在らしいから、何でも知ってる。そういうわけか? 「ま、それ『らしい』ってことでいいんだよ。こんな中二病患者的な事いきなり言っても混乱するだけだよな、すまない。真剣に考えなくていい」 液体窒素冷却でもしないと文字通り数秒で吹っ飛んでしまいそうな、超絶オーバークロックを 施したCPUみたいな状態に俺の脳内が達しつつあるってのを知ってか知らずか、 スマイル70%申し訳なさ30%の比率の顔でシュルツ氏は語りかけてくれた。 「つまり、長門やその親玉以上に全知全能の神様みたいなもの、ってことでしょうか?」 「だね。つまるところそうだ。ま、長門君とは違い、我々の処理能力にはある程度足かせがはめられてるがね」 ということは・・・だ。今回のSOS団員の消滅事件についても全て知っている、ということなのでしょうかね? 「ま、大方そういうことだ」 『ま』が多いお方だ。いろんな意味でな。 「俺がここに現れた目的だが、ご想像にお任せする。カンのよさそうな君なら判るだろう」 さしずめ、今まで外界から監視しているだけだったハルヒが、俺以外の団員ごと行方をくらましたからだろう。 「そういうことだ」 大体のことを知ってるのなら、解決する手段も持ち合わせているか、少なくとも解決方法ぐらい知っているんじゃないのか? 「なぜ俺の前に現れたんです?超凡人な俺が介在しなくても、トンデモ能力持ってそうなあなた方なら、消滅事件は解決できるんじゃないんですか?」 「それはだ、事件解決の手段、いやキーの一つを、君が持っているからだ。それを知らせに、俺は君のもとへ現れた」 長門といいこの人といい、皆俺を頼りすぎだ。何処かをうろついてるだろう古泉にもそのキーとやらを持たせてくれたら、俺は俺で大助かりなんだが。 「君はな。宇宙人、未来人、超能力者やその関係者がいるSOS団やそれに関連する人の中で唯一、涼宮君に一番近いうちの一人でありながらどの勢力の影響下にも居ない、貴重な人間なんだ」 ごく平凡な一個人でありたかったけどね。 「でも、ある意味謳歌してるんだろう?この状況を」 確かにね。この一年ちょっとの間に俺は成長した。いや、単に開き直りの境地を超えて、SOS団の純朴なる構成要素のひとつと化すことにある種の快楽を覚え、 脳内麻薬がドバドバとでちまうような、そんなヤバゲな脳になっちまってるのかもしれないが、確かに心底楽しんでるんだよな、俺。 「というわけでだ。君はこれから、己が思うままに行動してくれ」 あのう? 俺って何かキーを持ってるんですよね。なら、そのキーが合うような鍵穴を見つけなければならんわけだ。だけど、俺には未来を知る術もないし、 長門のような宇宙的超絶能力も持ってないし、古泉のように巨大な情報網も持ってないし手からエネルギー弾も出せない。 思ったとおりに行動できるはずも、していいはずもないと思うんだが。 「君自体が”鍵”なんだ。これ以上詳しくは俺からもいえない。だが、君が彼女らを取り戻そうと思う限り、君が求める鍵穴は君の目の前に現れる。大丈夫だ」 そうニカッと笑われても・・・ねぇ? とにかく、やるしかないようだ。 やるって何を? 自分でもわからんさ、残念ながらな。 シュルツ氏は特に連絡先などを告げることなく、頑張れよ若いのと俺の肩をぽんと叩いて、俺より先に客間を後にした。 そういやこの謎会合の場は鶴屋さんの家だったりもしたんだが、鶴屋さんとは会わなかった。法事か何かに行ってるんだろうか。 ともかく、その日はそのまま家路について飯をかっ食らい、風呂に入りながら色々と思案をめぐらし、そのまま布団にもぐりこんで平和裏に寝ちまったわけだが、 翌日のっけからとんでもないモノを目にしちまうってわかってれば・・・少しは心の準備ができたんだが。 翌日。少々どきどきしながら登校し教室に入った俺だったが、俺の後ろのハルヒの席であったところに、何かが居た。 何か。 何かである。 いや、もうなんというか名状し難い。 あの初期ハルヒのオーラを身にまとい、巨乳と無表情な童顔。朝比奈さん・・・でもなく、長門・・・でもなく、ハルヒ・・・に若干近いが違う。 言うなれば「あの三人に似た全く別の人間」である。 不意にこっちをむいたその「何か」は 「おはよう」 ひゃうっ!と思わず口走ってしまうほど唐突に、朝の挨拶を俺に投げかけた。 「どうしたの」 こっちがどうしたんだと問いたい。お前は誰だ。 「涼門みるき」 ・・・なんだって? 「涼門みるき」 す・・・ずかどみるき? 「そう。三回聞き返した。若年性痴呆の可能性がある。良い病院を紹介しようか」 会話に疑問符も感嘆符も一切つけない「何か」ことこの「涼門みるき」なる女であるが、なる ほど、あの三人の名前が適度に交じり合っているので、あの消えた三人を適度にミックスしつつ ハルヒよりに再構築させたような雰囲気と風貌をあわせもっている。 っておい! 「落ち着きなさい。あたしになにか言いたいことがあるようだけど、どうかした」 「あ・・・いや、別に・・・」 「おかしなキョン。まあいいか」 と机の中から取り出した何やら巨大な医学書を開き、みるきは静かに読み始めた。 「面白いか、それ」 「ユニーク」 まるで長門と会話してるようだったが、声質は全然違う。当たりまえっちゃ当たり前 だが、当たり前で済んで欲しくはない俺は、いつも惰眠をむさぼりたい時間帯である 予鈴から1時間目にかけての間、脳みそをフル稼働させて脳内人格会議を行うも、もとより尽くす策 ははじめから持ち合わせていない俺にとっては時間の無駄以外の何者でも無かったよ うで、いつものように惰眠をむさぼるべく数学教師の太陽拳的頭頂部を眺めつつ眠り の沼に沈んだ。 かに思われた。 眠りの沼へ全身が没しようとした瞬間、いきなり後頭部を打撃が見舞い、ついでに勢 いあまって国語の教科書と硬い机にも頭突きを見舞い、俺は悶絶した。 「・・・ってめぇ」 後ろの野郎だ。なんてことをしてくれる、俺のそんなに多くない脳細胞がいち早く死 滅することになるだろうが。 「授業中。寝ないで」 ああ判ってるさ、授業は寝ないで真摯に聞いてこそ価値あるもんだ。だがな、お前 だっていつもそうしてたじゃないか、なあハル・・・。 顔に苦悶の表情を浮かべつつ後ろの席を顧みた俺は、つむぎかけた言葉を飲み込み、溜息する。 ハルヒじゃねえんだっけな・・・ ハルヒよ、どこに行ってしまったんだ。こんなにお前が恋しくなるとはおもわなんだぜ。 『わたしは ここにいる』 脳内に声が響いた。ハルヒの声・・・だな。どうやら二重打撃の所為で俺の脳みそは とうとう異常をきたしてしまったらしい・・・。 『わたしは ここにいる だから助けろって言ってんでしょバカキョン!!』 不意にその声は途切れ、ついでに頭痛も治まった。いつも頭痛のタネだったハルヒの 声で頭痛が治まるとは、なんというショック療法。 いや、そういう問題じゃない。問題はなんでハルヒの声がしたかなんだが・・・ 改めて後ろを振り向くも、後ろには俺が寝ないように見張りつつ高速でペンを動かし て綺麗な明朝体で黒板の文字を速記するみるきの姿があるのみで、ハルヒなんざは居 ない。いや、居るのか?この『みるき』の中に。 もう声はしない。 でも、居る気がする。確実に。 なんでかって? カンさ。だけど、なんだかんだ言ったって、ハルヒの一番近くに居た人間の一人であ る俺が言うんだ。間違いない。 ・・・と思う。 「その考えは間違ってはいません。むしろ正解に近いかと」 とは、1時間目終了とともに教室を飛び出したら、何故か教室の外にいやがった古泉の野郎の弁だ。まったく、この異常事態によくそんな無意味スマイルを纏っていられる。 「涼門みるきなる女性は、涼宮さん、長門さん、朝比奈さんの融合体・・・といったところでしょうか」 んなん見りゃわかるさ。ってか、お前も事情を知ってるんだな? 「ええ、昨日あなたが会ったあの男性ですが、我々の協力者のようなものです。そうですね。少なくとも、今の朝比奈さんより未来から来た朝比奈さんや、 長門さんの親玉よりははるかに信頼の置ける相手かと思われます。あの彼から自由に動いていいと言われるなんて、うらやましい限りです」 まぁ、神様から『成せば成る』と言われるようなものだからな。 「そうそう、この懸案は我々主導で解決させるということに決定しました。彼は伝えることを伝えたので、またスタンドからの観戦に戻るそうで」 あの人がいれば百人力のような気もするんだが。 「彼・・・いや、超高次存在――我々はアカシックレコードのことを暫定的にそう呼んでいます――それから遣わされている彼らは、長門さん以上の制限を課せられているようで、 自由に動けないらしいんですよ」 なら仕方ないか。古泉、少しはお前も手伝えよ。 「わかってます」 シュルツ氏と違い、なんだか好きになれんスマイルで俺を見つめてくる。ああっ、近い、息を吹きかけるな! 「僕に出来ることなら、なんなりとお申し付けを。それより、シュルツ氏からかなり有益な情報を戴きました。 「ほう」 「涼門みるきなる女性ですが、彼女は涼宮さんの願望がキーとなって生まれたようです」 またか。またハルヒの願望の所為か。全く、ちったあまともな願望は無いのか、ハルヒには。 「いや、あくまでキーに過ぎません。この現象は、涼宮さんの願望がキーとなり、朝比奈さんの願望、長門さんの願望が互いに交じり合った結果発生したものとシュルツ氏らは考えているようです」 こったようです」 「どういうことだよ、それは」 「涼宮さんが抱いていた、『可愛さや巨乳』への憧れ、朝比奈さんが抱いていた、『知』への憧れ、長門さんが抱いていた、『自由』への憧れ・・・。三人とも、それら誰かがあこがれるもののうちひとつだけは持っています。 しかしながら、無いものを強く求めた。だから、融合してしまったんです」 「ちょっと無理やり過ぎないか?」 ハルヒは朝比奈さんとまた別な可愛さを持ってると思うぜ。無意味スマイルをさらに増強させた古泉は 「そうなんです。無理やりですよね。でも、無理やりなことでも起こしてしまう、それが涼宮さんなんですよ」 あくまでキーはあなたです。何事もあなた主導で、と言い残し、古泉はさっさと自分のクラスに戻っていった。 役立たずめとも言いたくなったが、俺も尽くす策は何も持ち合わせてない役立たずなんだよなぁ・・・ やれやれだぜ。 次
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フジテレビ 土曜 土曜プレミアム 2023年10月~12月 2023年12月23日 今田孝太郎 絨毯の上にDoggyMan・YAMADA・エステー・B枠のアサヒビール以外カラー表記 任天堂・三井住友銀行が不在 A枠 1'00"…Kao、アサヒビール 0'30"…SUZUKI、積水ハウス、KIRIN(ビール)、Panasonic Homes、ソニー損保、DoggyMan、Panasonic、MITSUBISHI MOTORS、YAMADA B枠 0'30"…JT、レイク、SoftBank、Aflac、小林製薬、アコム、ALSOK、アイフル、エステー、MITSUBISHI ELECTRIC、プロミス、アサヒビール+AC JAPAN(PT)